作者:マーティ・ケーガン

翻訳者:インターンスタッフ(アーテリジェンス)


プロダクトがプロダクトであるための公式


この記事は現実的であり、重要かつ広く様々な場面に関わる根本的なテーマを扱います。特定の事象だけを取り扱うようなものではありません。


以前書いた、エンパワーされたプロダクトチームについての記事は多くの人に見られるようになりましたが、その反応を通じて読者がプロダクトについていくつか重要な側面の理解不足が浮き彫りになってきました。


「プロダクトとは何か」という漠然としたテーマには多くの重要な側面がありますが、この記事では中でもなぜ機能を横断したプロダクトチームが根本的に重要であり、ただの業界で流行っているバズワードではないことを説明していきます。


少し前置きとして話しますと、私が初めてプロダクトに出会ったとき、私はエンジニアリングを専門とする会社(HP Labs)でエンジニアとして仕事をしていました。基本的にエンジニアリングに携わっていなければ、過剰なオーバーヘッドコストと捉えられていました。デザイナーでさえ、自分たちのことを「人間的な面でのエンジニア」と呼ばざるを得なかったほどです。


テックリードになるにあたってコーチングを受けていたとき、エンジニアリングだけではプロダクトを作るにあたって本来は不十分だということをエンジニアリングマネージャーから教わりました。彼はホワイトボードにシンプルかつ重要な公式を書きました:


プロダクト= 顧客xビジネスxテクノロジー


「成功するテックプロダクトは、顧客、ビジネス、そしてテクノロジーという3つの問題を解決しなければならない」と、彼は説明しました。


この公式はテックプロダクトの4つの大きなリスクに対応しています。(1)ユーザビリティリスクを考えることは顧客の問題の解決に繋がり、(2)実現可能性のリスクを考えるのはテクノロジーの問題の解決に繋がり、(3)実行可能性のリスクを考えるのはビジネスの問題の解決に繋がります。最後に、(4)バリューリスクは3つ全てに関係しています。


さらに彼は、もしこの三つのどれか一つに全く触れなければ、結果(プロダクト)は失敗に終わると言いました。(仮に算数が苦手な人のために説明すると、何でも0をかけても0になるからです)


その後、彼はプロダクトマネージャービジネスの解決を、デザイナーが顧客の課題解決の役割を担う、ということを説明しました。エンジニアはすでに経験していたため、エンジニアがテクノロジーの問題を解決するというのはすでに理解していました。





三要素の密接な関わりの重要性と、理解不足の弊害


彼はさらに、これら3つの領域が深く絡み合っていることを説明しました。


テクノロジーについての決断はデザイナーの仕事に大きく影響を(良い方にも悪い方にも)及ぼします。同様に、デザインについての決断は大きくビジネス面のことを左右します。そして、もう明らかですが、ビジネス面での縛りというのはデザインやテクノロジーの分野での選択肢に多大なる影響をもたらします。


当時の職場では、私はエンジニアからテックリードという役割に私が移行しようとしていたため、エンジニアリングマネージャーとしては、これからの私の仕事がエンジニアリングだけに携わっていれば良い訳ではないということを理解強調しました。テックリードは、もう一歩前に出て、プロダクトマネージャーとデザイナーと協力して効果的な解決策を模索しなければなりません。


これらのことについて皆さんは何らかの方法でもう気づいていて当たり前の知識として知っていることを願っていますが、まだ理解しきれていない人たちがプロダクトの世界にはたくさんいます。わざわざこの話を説明したのはそのような意図があります。


残念ながらビジネスモデルが全てだと考えているプロダクトマネージャーやスタートアップの創設者をよく見ます。彼らはビジネスモデルキャンバスを全て埋めて、そのビジネスが素晴らしいものであり稼げるものだということを見せてきます。プライシング、コストストラクチャー、バリュープロポジションや最有力のマーケティング戦略は全て考え抜かれており、あとはアプリを作ってくれる会社を私から紹介してくれればいいという姿勢でいます。大げさに書いたと言いたいところですが、実際こういうことがあるのです。


また逆に、プロダクトはユーザーエクスペリエンスが全てだと勘違いしているデザイナーや、ひどいときだと同じく理解できていないデザインリーダー(そして少なからずのプロダクトマネージャーも)がいます。

彼らはユーザーを幸せにすれば成功すると考えているのです。資産やコスト、セールス、マーケティング、法務、プライバシーなどについては見向きもしないのです。そんなに簡単であればいいのですけどね。


またエンジニアの中でもプロダクトマネジメントやデザインは意味がないと考えている人が多いことは周知の事実でしょう。


プロダクトマネジメント、ユーザーエクスペリエンスの設計、そしてエンジニアリングのリーダーたちは、全員この根本を捉えた公式を深く理解し、プロダクトマネージャー、デザイナー、エンジニアを積極的に指導することが必要でしょう。


プロダクトへの理解が不十分なプロダクトマネージャーには厳しく接せよ


この記事をしっかり締めるために、ここからは忖度なしで明確に言います:


プロダクトマネージャーが、ビジネスが実際どのように動いているかについてほとんど理解していないことをCEOが知ったとき、そのプロダクトマネージャーにエンパワーされる可能性も信用される可能性もほとんどないでしょう。CEOはこの基準でプロダクトマネージャーを評価しているだろうし、だからこそ鈍い人またはそれ以下として一回評価されてしまうと、それをひっくり返すことはかなり難しいでしょう。だからこそ、私は宿題(=自己研鑽)をやらなければならないプロダクトマネージャーには厳しく接するのです。


さらに、ビジネスの問題解決においてどのようなものが必要なのか理解していないとみなされたプロダクト、デザイン、エンジニアリングのリーダーたちは重要な決断が下される場に呼ばれることはないでしょう。


なので、ビジネスが全てだとか、顧客が全てだとか、テクノロジーが全てだとして偏った視点から極論を言う人たちのことは聞かないようにしましょう。プロダクトはもっと複雑なものです。その三つ全てが関わっているのです。


記事を書くにあたって支援してくれたSVPGのパートナーのクリス・ジョーンズ氏には心から感謝をしています。


この記事は、SVPG社 (Silicon Valley Product Group、https://svpg.com/) の制作記事を、同社の許可を得て、アーテリジェンスのスタッフが無償で翻訳しています。本翻訳記事の無断での複製・転載を禁じます。