作者:マーティ・ケーガン

翻訳者:インターンスタッフ(アーテリジェンス)‍


プロダクトチームを生み出すための「企業改革」とは何なのか?


効果的な改革について書いた以前の記事では、効果的に改革を行うために必要な手順について説明し、次の改革の実践に関する記事では、改革されたチームと組織が実践できることの例を示しました。


これらの記事により、このような「改革」に含まれるものは何なのか、そしてなぜ多くの企業は失敗するのか、という議論が起きました。


この記事では、企業が効果的な改革を成功させるために必要だと考えることを紹介したいと思います。


あなたの会社が改革を試みているが思うように進んでいない場合、このリストがもしかしたら何が足りなくて何をすればいいのかのヒントになるかもしれません。



改革へのチェックリスト


1.上層部からのサポート


理論的には不可能ではありませんが、上層部のサポートなしに改革を成功させるのは非常に難しいです。なぜそうなのかは、以降のリストを読めばわかると思います。


そして一つ明確にしておかなければならないのが、私が話しているのはただCEOが上層部の誰かをDX担当のリーダーに任命することではない、ということです。よくある間違いですが、これをしてしまうと従来の働き方から離れることが難しくなってしまいます。


2.テクノロジーの役割


成功する改革は、根本的にテクノロジーの役割を「必要コスト」から、「ビジネスの幅を広げる中心的な役割を担うもの」へと改変させるものです。テクノロジーをどう評価するかにより、テクノロジーに対しての資金の使い方、チームの組み方、そしてテクノロジーが収益の中心に位置するものとなるか、それかアウトソースされるべきものなのか、など会社のほぼ全ての側面に影響を及ぼします。


3.プロダクトを超えた影響を理解する


先述の2点から分かることは、プロダクトマネジメント、プロダクトデザイン、エンジニアリングが確かに改革の中心にあるのですが、改革の影響はプロダクトチームの枠をはるかに超えたところまで届くことになります。


改革により、プロダクトチームだけでなく、財務、人事、セールス、マーケティング、カスタマーサービス・サクセスにおいて抜本的な変更が求められることが少なくない、ということです。


4.優秀なプロダクトリーダー


上層部からのサポートが受けられているのであれば(あり得ないような前提ですが)、あとはプロダクトリーダーの手腕に全てがかかっています。特に、プロダクトマネジメント、プロダクトデザイン、エンジニアリングを統括する人たちが、これに当てはまります。


これは例えようがないほど重要です。これらの人たちがその後起こる全ての事について責任と説明義務を負います。


強力なプロダクト組織がどのようなものか、そしてそれらを構築する方法を知っている経験豊富なリーダーが必ずいるようにするか、少なくとも、これから対峙する改革のための業務をこなす際のエグゼクティブコーチングをつけるようにしなければなりません。


5.優秀なプロダクトマネージャー


エンパワーされたプロダクトチームは、強く、有能なプロダクトマネージャーに頼っています。改革を試みている企業にとって、プロダクトマネージャーとは新しい役職です。


確かに、「プロダクトマネージャー」という肩書きを持っている人を社内にたくさん擁していることが多いですが、真のプロダクトチームにおいてのプロダクトマネージャーの役割と、大きく異なる役割を担っていることが多いです。


経験豊富なプロダクトリーダーが必要なのはこのようなときです。どの人がプロダクトマネジメントなどの仕事に適しているか、そしてどの人がコーチングやトレーニングを通してデザイナーやエンジニアが必要とする真のプロダクトマネージャーになれる可能性を持っているのかを見抜かなければなりません。


つまり、上層部はプロダクトマネージャー一人一人が未来の会社のリーダーになる可能性を持っている、と考えるべきだということです。プロダクトマネージャーは単なるポジションとしての役職ではなく、顧客を深く理解しており、ビジネスのダイナミクスを理解している人が担当しなければならないのです。


6.エンパワーされたエンジニア


一貫したイノベーションを起こすためのエンジンは、エンパワーされたエンジニアたちです。効果的な改革の重要な要素として、エンジニアを真にエンパワーし、モチベーションを上げることがあります。


かなり明らかだと思いますが、エンジニアをアウトソーシングしているのでは、エンパワーされたエンジニアたちを作り上げることはできません。


エンジニアをトップに据えろというわけではありません。ただ、いわゆる「地下室」から引っ張り出して、前線、プロダクトチームの中心、難題に対してのソリューションを考える中心に置くべきだと、私は考えています。


7.インサイトベースのプロダクト戦略


プロダクト戦略の目的は、会社が目的を達成するために解決する必要がある最も重要な問題を定めることです。


まだ改革を起こせていない企業のほとんどは、プロダクト戦略を作ったことがありません。それは、彼らの「戦略」が単にできるだけ多くのステークホルダーにサービスを提供することだったからです。そしてもちろん、それはまったく戦略ではありません。


しかし、定量的および定性的な洞察の両方に基づく効果的なプロダクト戦略は、従業員の才能を引き出すだけでなく、テクノロジーへの投資を最大限に活用するための鍵となります。


プロダクトリーダーはこのプロダクト戦略を作る責任があり、これが経験豊富で優秀なプロダクトリーダーを持つことが非常に重要であるもう1つの理由です。


8.テクノロジーチームとそれ以外のステークホルダーの協調


改革を成功させる際に最も難しい側面の一つが、プロダクト組織とビジネスのそれ以外の部分との関係性を再定義することです。


それが難しい理由は、それが企業の政治とそれぞれの担当領域を浮き彫りにし、中心的なステークホルダーにとって大きな変化をもたらすからです。


改革には、テクノロジーチームが「ビジネスにサービスを提供する」ために存在するモデルから、「ビジネスに役立つ方法で顧客にサービスを提供する」ために存在するモデルへの移行、が基本として含まれます。つまり、それは従属モデルから協調モデルに移行することを意味します。


ほとんどのステークホルダーは従来の働き方に不満を持っているため、少なくとも試してみようと考えますが、一部のステークホルダーは個人的な主導権を失う可能性があり、プロダクトリーダーとプロダクトチームはこれに敏感である必要があります。


リーダーは、プロダクトチームがステップアップして必要なことを実行する準備ができるまで、この変更を促そうとしないことが重要ですが、準備ができたら、ステークホルダーが協調モデルに移行するサポートを、上層部に依頼することも必要かもしれません。


重要な変更であるため、曖昧にしないことが求められます。


9.継続的な考えの共有


プロダクトリーダーのさらに別の重要な責任は、継続的に自分たちの考えを共有することです。彼らは、プロダクトのビジョン、プロダクト戦略、およびより大規模な改革の重要性を広める必要があります。


プロダクトのビジョンは、組織全体の仕事と協力に対するインスピレーションとモチベーションとなります。


プロダクト戦略は、何をするべきで、何をするべきでないかについての論理的根拠を明確にするため、非常に重要です。


より広く捉えると、プロダクトチームは、解決を求められている問題のプロダクトディスカバリーに取り組んでいる間、常に学習しています。その学習を正確に、そして会社全域に共有することで、どのように学びは得られるのか、そしてどこからイノベーションはきているのかを社内全体が見えるようにするべきです。


10.リーダーの「勇気」


改革を成功させるのが困難であることは間違いありません。このリストが、なぜそうなるのか、そして成功するために何に取り組む必要があるのか​​を具体的に明らかにするのに役立つことを願っています。


しかし、改革が成功したケースの全てにおいて、勇気のあるリーダーが必要だった、ということは指摘しなければなりません。


現在のモデルが大きな問題を抱えていても、根本的に異なるモデルに移行するには、「希望と勇気」が必要です。多くの場合、改革を遂げた企業の上層部のリーダーは、改革を遂げるに必要だった勇気について、十分な賞賛を受けていません(株式市場はこれらの企業に劇的な報酬を与えているので、彼らを気の毒に思う必要はありませんが)。ただ、ほとんどのリーダーは企業が生き残るだけでなく、活躍するために必要な改革を起こすほどの勇気、そしてやる気を持っていません。


このリストが効果的に改革を成功させ、エンパワーされたプロダクトチームを作るのに何が必要かをより深く理解する手助けになったことを願います。


今後も効果的な改革に関して我々が学んだことを伝え、また理解を深めていくことに努めていきます。


注記:この記事は、SVPG社 (Silicon Valley Product  Group、https://svpg.com/) の制作記 事を、同社の許可を得て、アーテリジェンスのスタッフが無償で翻訳しています。本翻訳 記事の無断での複製・転載を禁じます。