作者:マーティ・ケーガン
翻訳者:インターンスタッフ(アーテリジェンス)
前回の記事では、迅速なプロダクトディスカバリーによる学習と、プロダクトデリバリーを着実に行うこととの両立の方法をお伝えしました。この記事で読者からはとても良い反応を頂きました。また、チームが一方または両方でどのように改善できるかについて多くの質問も頂きました。これを考えるにおいては深く企業のカルチャーについて掘り下げなければなりません。要するに、イノベーションを重視するカルチャーか、エグゼキューションを重視するカルチャーかを議論しなければならない、ということです。
この記事では企業文化がどのようにイノベーションやエグゼキューションを助長したり妨げたりするかを話していきたいと思います。その後、皆さんのチームが問うべき深い問題を挙げていきます。
イノベーションに強い文化
では、強いイノベーティブな文化とはどういうことでしょう?
1、検証の文化
チームは自分でテスティングできる権限があるとわかっており、いくつかは成功し多くは失敗することが理解されていて、許されている。
2、オープンマインドな文化
チームは、優れたアイデアはどこからでも得られることを知っており、最初から常に明白であるとは限らないことがわかっている。
3、エンパワーメントを持つ文化
個人やチームはアイデアを試すことができるようにエンパワーされている。
4、テクノロジーを受け入れる文化
チームは、新しいテクノロジーやデータの分析、または顧客から真のイノベーションを起こす刺激が受けられるということを理解している。
5、ビジネスと顧客に精通したチームの文化
デベロッパーやチームが、ビジネスのニーズや制限について深く理解しており、ユーザーや顧客についても理解をしている(またアクセスできる)。
6、スキルセットの多様性を重要視する文化
チームは、さまざまなスキルが革新的なソリューションを生み出すことを理解している。(特にエンジニアリング、UXデザイン、プロダクト)
7、ディスカバリー技術を持つ文化
アイデアを迅速かつ安全にテストするためのメカニズムが整っています(ブランド、収益、顧客、同僚を保護しながら)
エグゼキューションに強い文化
次に、強力なエグゼキューションの文化を持つということはどういうことでしょう?
1、緊急性を感じられる文化
社内は自分が戦争しているような感覚にいて、早く動く方法を見つけなければ大変なことになると考えている。
2、熱意を持ってコミット(物事に積極的に貢献)する文化
チームは、コミットメントの必要性(およびその力)を理解しているが、その中でも熱意のあるコミットメントが必要だと考えている。
3、エンパワーメントの文化
自分たちの役割を達成するに十分なツール、リソース、そして権限を持っている。
4、アカウンタビリティの文化
何らかの形で、人々やチームは、役割を果たさなければならないと強く感じている。アカウンタビリティとはまた結果を考えることにも関係しており、特別、よほどのことがなければ、解雇とはならないが、周りからの評価という点で、結果に左右されるものがある。
5、コラボレーションの文化
チームの自律性とエンパワーメントは重要だが、最大かつ最も意味のある目標の多くを達成するためには、協力することが最も重要だと理解している。
6、結果重視の文化
アウトプットに焦点を当てているのか、それとも結果に焦点を当てているのか?
7、評価の文化
チームは何をすれば報われるか、または評価されるか、という観点でヒントを得る。素晴らしいアイデアを出したチームのみが評価されるのか、またはとても難しい役割をこなしたチームが評価されるのか?そしてもし自分の役割が達成できなかったとき、簡単に言い訳できるようであればそれは何を表しているのか?
追求するべき問題
したがって、これらの特性が各文化の定義に当てはまる場合、議論すべき問題があります。
・イノベーションの文化は、本質的にエグゼキューションの文化と対立しているのでしょうか?
・強力なエグゼキューションの文化は、ストレスの多い(またはより悪い)職場環境につながりますか?
・リーダーを含め、どのようなタイプの人々が、それぞれのタイプの文化に惹かれ、必要とされていますか?
イノベーションとエグゼキューションの両立
一貫したイノベーションとエグゼキューションを両立できている企業も存在します。
Amazonは一番いい例の一つでしょう。ただし、Amazonの仕事環境が気弱な人向けではないこともよく知られています。経験から、エグゼキューションに非常に強いほとんどの企業は、働くのがかなり難しい場所だということはわかっています。
私がともに仕事をした企業の中でも、イノベーションとエグゼキューションどちらにも強い企業というのはごくわずかです。多くの企業はエグゼキューションは得意ですが、イノベーションは得意ではありません。イノベーションに強く、エグゼキューションに問題がない人もいます。そして、がっかりするほどの数の企業はイノベーションとエグゼキューションの両方が苦手です(通常、はるか昔にプロダクトの魔法を失ったが、それでも頼りになる強力なブランドと顧客基盤を持っている古い企業)。
いずれにせよ、あなたとあなたのチームが行うべきことは、イノベーションとエグゼキューションの側面に沿って自分自身を評価し、チームまたは会社として何になりたいか、または何になる必要があると思うかを自問することです。強力なイノベーションと強力なエグゼキューションのための技術は存在し、大企業でも理解されていますが、実行して、カルチャーの改革を行うまでが、難しいところです。
注記:この記事は、SVPG社 (Silicon Valley Product Group、https://svpg.com/) の制作記 事を、同社の許可を得て、アーテリジェンスのスタッフが無償で翻訳しています。本翻訳 記事の無断での複製・転載を禁じます。