作者:マーティ・ケーガン
翻訳者:インターンスタッフ(アーテリジェンス)
大企業とスタートアップ
私はよくこの2つの質問をされます。それは「素敵で新しいスタートアップに入るべきでしょうか。」「私が所属しているスタートアップは上手くいってないのですが、積極的に採用活動を行っている大企業に転職するべきでしょうか。」というものです。
私は真新しいスタートアップから、10万人を超える人を雇っている大企業まで、様々な規模の大きさの企業で働いてきました。そのため今では、私にとって大企業で働くこととスタートアップで働くことのトレードオフはとてもはっきりしています。
スタートアップのメリット・デメリット
シリコンバレーの有名なスタートアップはまるで、驚くほど生産的で革新的な「プロダクト創造マシン」のようです。そこで働く人たちは皆、自分たちのビジネスがどのようなものであるか、なぜ自分がそこにいるのかを理解しています。決定は素早く下され、すべての人間が目に見える働きをしていて、役割はとても明白でかつ皆が自分の役割を理解しています。決まって予算は厳しいため、皆が長時間の激務をこなしていますが、その結果としてプロダクトが作られて、そのプロダクトを素早くマーケットへ投入することが可能になっています。そして大抵の場合、社員は皆自分の資金を会社に投資して資本参加をしています。
否定的な面として挙げられるのは、企業のリスクが大きいこと、仕事が激務であること、ワーク・ライフ・バランスを維持することが難しいということ、恒常的に資金調達や収益の心配をしなければいけないこと、プロダクトの成功に会社の存続がかかっているためにミスに対する許容があまりないということなどです。
大企業のメリット・デメリット
大企業には、通常であればスタートアップに比べてかなり大きな資金があり、プロダクトをマーケットに投入するまでの過程により長い時間をかけることができます。また、その中で多少のミスをしてしまっても深刻な事態にはなりません。大企業は、そういった余裕が出るくらいに収益が十分に多角化しています。そして、大企業では自分の仕事によって数百万人規模のユーザーや顧客に影響を与えることが可能です。
しかしながら、多くの大企業には、官僚主義や権力闘争、マトリックス組織、複数の管理者層、頻繁で乱雑にも思える異動や組織改編、あまりにも頻繁に行われる終わりの見えない会議などがあります。これらは、大企業においてはすべての決定に多くの人たちが影響を受けることや、多くの人たちがその決定にかかわりたがることが理由で生じてしまいます。
(前述したものに加えて、大企業には雇用の安定があるという見方もありますが、私がそう思ったことは1度もありません。私は、数えきれないほどの数の大企業が業績悪化による一時解雇をするのを見てきました。時にそれはいらない人材をクビにしたり、雇用ミスの修正をしたりするための解雇でしたが、ほとんどの場合は、企業が方針の変更を決めた際にチーム全体、もしくは組織ごと解雇するというものでした。そのため少なくとも、スタートアップで働いた方が、自分の進む道は決めやすくなるでしょう)
結果的に大企業とスタートアップのどちらがいいのか
そうすると、スタートアップと大企業ではどちらがいいのでしょうか。その答えは、人によるものであり、ワーク・ライフ・バランス、給与、実務経験、自分の生まれつきの性格などの面から考えて、自分が求める条件に左右されるのです。しかし、大企業でもスタートアップでも上手くやっていける人もいますが、大抵の場合、人は大企業に合うタイプとスタートアップに合うタイプのどちらかになるようです。(どちらでも上手くいかない人もたくさんいます。)
私の経験上、大企業で働きたい人で、根からせっかちな人や、典型的な社内政治にストレスを感じてしまう人、会議が終わるまで座っていることができない人、ずっと同じ仕事を他の人たちとするよりも仕事を全て自分1人でしたがる人は、大企業では苦しむことになるでしょう。
同じように、努力や奮闘が必要な場所で仕事ができない、もしくはしたくない人や、リスクや不確定要素がつきまとう場所にいたくない人、業務において上司の手助けを多く必要とする人、毎日やりたくない仕事をするよりも部下に仕事を振りたい人は、スタートアップでは苦しむことになるでしょう。
まとめ
大企業とスタートアップのどちらに所属していても、素晴らしいプロダクトを作ることは絶対にできるでしょう。しかし、プロダクトを作る過程で苦しい思いをするかどうかは、働く環境が自分に合っているかどうかによって変わってくるのです。
注記:この記事は、SVPG社 (Silicon Valley Product Group、https://svpg.com/) の制作記 事を、同社の許可を得て、アーテリジェンスのスタッフが無償で翻訳しています。本翻訳 記事の無断での複製・転載を禁じます。